キレーションが危険なのではなく、キレーションを行う医師が危険!

 栄養医学研究所 2006年3月9日


米国のMMWR誌(Morbidity and Mortality Weekly Report)の2006年2月(55:204-207)で、2005年ニューヨークで起きた2人の小児が鉛の排泄のためのキレート療法を受け心配停止で死亡した事件が紹介され波紋を呼んでいる。
Na2-EDTAを用いたキレートは広く鉛中毒や長期間の鉛蓄積による症状の改善のために行われてきた。米国FDA(食品医薬品局)、CDCP(米国疾病予防管理センター)は従来から低カルシウム血症や致命的なテタニーを引き起こす可能性が高いことから、小児にNa2-EDTAを使用することは危険であるとしてその使用を危惧してきた。
以下にテキサス州ヘルスサービス局のDr. R. A. Beauchampによるその経緯を報告する。

最初の事例はテキサスで起こった。血中鉛値は48 g/dLにも至っており急性鉛中毒と診断されたテキサスに住む2歳女児は地元のメディカルセンターに入院し、経口とIVによるキレート療法が進められた。キレートをスタート前の彼女の血清中電解質の値は正常値であった。キレート剤にはCa-EDTAが選択され、フォローのためにDMSAが経口投与された。翌朝午前4時、彼女は誤ってNa2-EDTAを静脈注射され、その1時間後には彼女の血中カルシウムは5.2 mg/dLまで低下した。午前7時5分には呼吸ができないほどの状態になり、塩化カルシウムの連続投与の甲斐もなく彼女は午前8時12分に息をひきとった。
死因は低カルシウム血症に起因する突然の心拍停止として記録された。
第2の事例はペンシルバニア在住の5歳の自閉症男児。彼はクリニックで水銀キレートのためにNa2-EDTAの治療を受けていたが、突然意識を失い死亡した。死因はNa2-EDTAによって引き起こされたび慢性内膜下壊死および急性の大脳低酸素下性であった。

さらに、2003年に起きたオレゴン州在住の53歳女性のケースは、重金属排泄のためのキレート療法でEDTAを使用されたものだ。彼女はEDTAの静脈注射を受けて15分後意識を失い死亡した。死因はやはり低カルシウム血症に起因するもので、心臓の不整脈によるものと報告されている。現在オレゴン州政府関係機関によって、彼女に使用されたEDTAがNa2-EDTAかCa-EDTAであったのかを調査している。

米国FDA(食品医薬品局)、CDCP(米国疾病予防管理センター)は今回のケースを重く見て、少なくとも鉛中毒、水銀排泄の目的でEDTAを使用することは禁止するべきという意見がでている。

IBCMT(International Board of Clinical Metal Toxicology)はヨーロッパを中心に重金属や化学物質の毒性およびその排泄施術方法の教育啓蒙を行っている国際学会で、今回の報告書に対してIBCMTの会長であるPeter J. VanDerSchaar, MD, PhDは以下のコメントを提示している。

「今回の事例は非常に残念なケースであるとともに、実際に治療を担った担当医師がEDTAを用いたキレート療法に対してどれだけの教育を受け、どれほどの知識と経験があったのかが疑問である。商業的な目的も含め、世界的に水銀、鉛など重金属のキレーション療法には非常に関心が高くなっている。加えてアンチエイジング療法の施術としてEDTAなどのキレート剤を用いた治療が話題になり、世界的に様々な組織が立ち上がっていることも事実である。しかし、残念なことに、その多くがあまりにも利益至上主義の基、商業ベースで進められ、実際にキレーションを行う医師に対して十分で的確な、そして正しい教育カリキュラムを整備されている組織があまりにも少ない。したがってこのような組織から派生した医師は、十分な知識と経験をもたないまま治療を行なうことになり、不幸な結果を招くことになる。今回のケースは氷山の1角といってもよく、世界的なアンチエイジングの流れを考えると、今後も未熟、未経験の医師によるこのよな被害は避けられないことが危惧される。十分な教育カリキュラムによってトレーニングされた医師であれば今回のようなケースは未然に防ぐことが可能であり、またキレーション自体は、臨床的にもその効果は立証されているにもかかわらず、このような未熟な医師による医療被害によって行政によって封印されることは悲しいことである。」

「読者から投稿原稿」を募集しています!
予防医療.com はこの度、予防医療、統合医療の普及に役立つための投稿原稿を広く読者から募集いたします。提案いただいた原稿は、当委員会の「学術委員・普及委員・実行委員」の中に評価委員会を設置、評価・選定の上、掲載いたします。応募原稿を全て掲載する分けではありません。未掲載の場合は選評を送信します。Info@yobou.comまでお寄せください。


BACKSITE TOPPAGE TOP